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ヴェロキラプトル(学名 Velociraptor mongoliensis)は、約7,500万〜7,100万年前の白亜紀後期、現在のモンゴルや中国の乾燥地帯にすんでいた小型の肉食恐竜です。学名は「すばやい略奪者」を意味します。映画で大きな人気を得ましたが、本当の姿は映画とはかなりちがっていました。
映画では人間ほどの大きさで描かれますが、本物のヴェロキラプトルは全長2メートルほど、体重は15〜25キロしかありませんでした。ちょうど大きな七面鳥くらいのサイズです。映画に登場する大型のラプトルは、実際にはデイノニクスという別の恐竜の姿に近いものでした。とはいえ、すばやく賢いハンターだったことは間違いありません。
後ろあしの第2指には、大きく曲がったかぎ爪(シックルクロー)がありました。長さは数センチ。歩くときはこの爪を地面につけないよう持ち上げ、獲物を押さえつけるときに使ったと考えられています。鋭い歯とあわせて、自分と同じくらいか少し小さな動物を狩っていました。近年では、現在のワシやタカのように、爪で獲物を押さえこんで生きたまま食べた、という説も出されています。
ヴェロキラプトルは全身が羽毛でおおわれていたことが分かっています。前あしの骨には、羽の軸がついていた跡(羽軸瘤)が見つかっており、これは現在の鳥の翼にある構造とまったく同じです。空は飛べませんでしたが、羽毛は体温を保つこと、ディスプレイ、卵を温めることなどに役立ったと考えられます。鳥が恐竜から進化したことを示す、とても重要な証拠のひとつです。
モンゴルで見つかった有名な化石に、ヴェロキラプトルと植物食恐竜プロトケラトプスが組み合ったまま埋まった「格闘化石」があります。ヴェロキラプトルがかぎ爪を相手の首に突き立て、プロトケラトプスがその腕にかみついた状態でした。砂嵐か砂丘の崩落で、戦いの最中に生き埋めになったと考えられています。恐竜の生きた行動をそのまま閉じ込めた、世界的にも貴重な標本です。
ヴェロキラプトルは、体のわりに脳が大きく、恐竜のなかでも知能が高かったと考えられています。すばやさと賢さを武器に、乾いた大地でたくましく生きていました。群れで狩りをしたかどうかははっきりしていませんが、近縁種では集団で行動した証拠もあり、ヴェロキラプトルも仲間と協力した可能性があります。
ヴェロキラプトルは1924年、モンゴルで見つかった頭骨をもとに記載されました。「すばやい略奪者」という名のとおり、発見当初から俊敏なハンターと考えられていました。その後の発掘で多くの標本が見つかり、羽毛の証拠や格闘化石など、数々の重要な発見をもたらしてきました。小型ながら、恐竜研究の歴史に大きな足跡を残した恐竜です。
ヴェロキラプトルがいたのは、砂丘の広がる乾燥した内陸でした。オアシスや一時的な水場のまわりにさまざまな動物が集まり、ヴェロキラプトルもそうした場所で獲物を狙っていたとみられます。砂嵐が多い環境だったため、動物がそのまま埋もれ、保存のよい化石が数多く残されました。
ヴェロキラプトルが属するドロマエオサウルス科は、鳥にもっとも近い恐竜のグループのひとつです。羽毛・骨の特徴・繁殖のしかたなど、鳥と共通する点が数多くあります。「恐竜は絶滅したのではなく、鳥として今も生きている」という現代の考え方を理解するうえで、ヴェロキラプトルはとても大切な恐竜なのです。
分類:竜盤目 > 獣脚亜目 > コエルロサウルス類 > ドロマエオサウルス科