

2026年7月14日、アメリカのオークション会社サザビーズで、ほぼ完全なティラノサウルスの骨格「ガス(Gus)」が、なんと約5,010万ドル(1ドル約150円として約75億円)で落札されました。これは、これまででいちばん高い値段で売れた化石。恐竜1体が家より、いえ、ビルより高い値段で取り引きされたのです。
ガスは、アメリカ・サウスダコタ州の牧場で2021年に見つかった、大型のティラノサウルスです。全長は約11.6メートル、頭の骨だけで約1.4メートルもあります。骨の数でおよそ63%がそろっていて、これはこれまでに見つかったティラノサウルスのなかでも、もっとも完全なものの一つ。名前の「ガス」は、化石が見つかった牧場のもち主の名前にちなんでいます。
オークションでは、事前の予想(2,000万〜3,000万ドル)を大きくこえる値段がつきました。7人の買い手が約10分間も値段をつり上げ合い、最後は約5,010万ドルに。これまでの記録だったティラノサウルス「エイペックス」を、さらに500万ドルも上回る、堂々の史上最高額となりました。
ところが、この落札には心配の声も上がっています。買ったのは名前を明かさない個人とみられ、博物館は入札しませんでした。もし個人のコレクションになってしまうと、多くの人が見たり、研究者が調べたりできなくなるかもしれません。「貴重な化石は、みんなで見られる場所にあってほしい」——科学者たちからは、そんな声が上がっています。
恐竜の化石は、ふつう体の一部の骨しか見つかりません。全身の骨がたくさんそろっているものは、とてもめずらしいのです。骨が多くそろっているほど、その恐竜の本当の大きさや姿、どんなふうに動いたかまでくわしく分かります。だからこそ、ガスのような“ほぼ完全”な化石は、研究者にとってお金にかえられないほど大切な「宝物」なのです。
近年、りっぱな恐竜化石が高い値段で取り引きされることが増えています。「化石は科学の宝物だから、みんなが見られる博物館にあるべきだ」という考えと、「見つけた人のものだから売ってよい」という考えがぶつかっています。ガスの落札は、恐竜化石が「だれのものなのか」を、あらためて世界に問いかける出来事になりました。ティラノサウルスについては、「T.レックスは“約40歳”でようやく大人に」の記事もあわせてどうぞ。
出典:The Washington Post/NPR(2026年7月)
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