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スピノサウルス(学名 Spinosaurus aegyptiacus)は、約1億〜9,400万年前の白亜紀、現在の北アフリカにすんでいた巨大な肉食恐竜です。学名は「とげのあるトカゲ」を意味し、背中に大きな帆をもつ独特の姿で知られます。全長14〜15メートルにもなり、知られているなかで最大級の肉食恐竜とされています。
スピノサウルス最大の特徴は、背骨が長くのびてつくる大きな「帆」です。高さは2メートル近くにもなりました。この帆の役割については、体温調節、仲間へのアピール、水中で泳ぐときのかじ取りなど、さまざまな説が出されていますが、まだはっきりしていません。いずれにせよ、遠くからでもよく目立つ、印象的な姿だったでしょう。
スピノサウルスの口先は、ワニのように細long長く、円すい形の歯が並んでいました。これは肉を切り裂くより、ぬるぬるした魚をしっかりくわえて捕らえるのに向いた形です。鼻の穴が顔の上のほうにあることや、口先に水の動きを感じる感覚器官があったことからも、水辺で魚を主食にしていたと考えられています。同じ地域には全長数メートルの巨大な魚がたくさんいて、スピノサウルスのごちそうになっていました。
近年の研究では、尾の骨がひれのように平たく発達していたことが分かり、スピノサウルスは水中を泳いで魚を狩る「半水生の恐竜」だったという説が有力になっています。これは「恐竜はすべて陸上で暮らした」というそれまでの常識をくつがえす、大きな発見でした。ただし、どこまで泳ぎが得意だったのか、それとも水辺で待ちぶせるタイプだったのかについては、今も研究者のあいだで活発に議論が続いています。
スピノサウルスは、最初に見つかった化石が、第二次世界大戦中の空襲でドイツの博物館もろとも失われてしまいました。そのため長いあいだ、その姿は大きな謎に包まれていました。その後モロッコなどで新しい化石が少しずつ見つかり、本当の姿が明らかになってきましたが、いまだに完全な全身骨格は見つかっておらず、体重の推定には大きな幅があります。
全長ではスピノサウルスのほうがティラノサウルスより長く、最大級の肉食恐竜とされます。ただし体型はまるでちがい、ティラノサウルスががっしりした陸の王者だったのに対し、スピノサウルスは細long長く、水辺の暮らしに適応していました。狩る相手も、ティラノが大型の植物食恐竜だったのに対し、スピノサウルスは魚が中心。同じ「最大級の肉食恐竜」でも、まったく別の生き方をしていたのです。
スピノサウルスのなかま(スピノサウルス科)には、イギリスのバリオニクス、アフリカのスコミムス、ブラジルのイリテーター、ラオスのイクチオヴェナトルなどがいます。いずれもワニのような細long長い口と円すい形の歯をもち、魚食に適応していました。世界各地でこうした水辺の肉食恐竜が見つかることから、スピノサウルス類が広く繁栄していたことが分かります。
スピノサウルスがいた白亜紀の北アフリカは、大きな川や湿地が広がる水辺の世界でした。巨大な魚やカメ、ワニのなかま、ほかの肉食恐竜などもすんでおり、生きものでにぎわう豊かな生態系でした。スピノサウルスはその水辺の生態系で、ほかの恐竜とは食べ物の取り合いをせずにすむ、独自の地位を築いていたと考えられます。
分類:竜盤目 > 獣脚亜目 > メガロサウルス上科 > スピノサウルス科