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フクイベナトルは、約1億2,000万年前の白亜紀前期、いまの福井県勝山市にすんでいた小型の獣脚類(肉食恐竜のなかま)です。学名は「福井のハンター」を意味し、種名の「パラドクスス(逆説的な)」は、肉食恐竜なのに必ずしも肉食とはいいきれない不思議な特徴をもつことに由来します。日本で発見・命名された獣脚類のなかでも、とりわけ研究上の価値が高い恐竜です。
フクイベナトルの骨格は、勝山市の北谷(きただに)層という地層から見つかりました。全身の骨のうち7割以上がそろう非常に良好な標本で、これは日本産の獣脚類としては例外的なことです。2016年、東洋一(あずま・よういち)博士らによって新属新種として発表されました。
多くの肉食恐竜はステーキナイフのようなギザギザの歯をもちますが、フクイベナトルの歯はギザギザがなく、形もさまざまでした。このことから、肉だけでなく植物や小動物など、いろいろなものを食べる雑食だった可能性が考えられています。種名「逆説的な」は、まさにこの意外さを表しています。
北谷層は、川や湖のある氾濫原(はんらんげん)でたまった地層で、フクイラプトルなど他の恐竜化石も多く産出しています。フクイベナトルは、鳥に近いグループ(マニラプトル形類)に位置づけられており、羽毛をもっていた可能性も考えられます。鳥への進化の道すじを考えるうえで注目される一種です。
標本は福井県立恐竜博物館に収蔵・展示され、内耳のCTスキャン研究なども行われています。バランス感覚や聴覚といった、骨だけでは分からない「生きていたころの能力」にまで研究が広がっている、日本の恐竜研究を象徴する存在です。
ホロタイプ(基準標本):福井県立恐竜博物館 FPDM-V8461(保存率7割超のほぼ全身骨格)