
「6600万年前の“事件現場”が、そのまま化石になっていた」——2026年7月、アメリカの研究チームがおどろきの化石を発表しました。草食恐竜エドモントサウルスの頭骨に、肉食恐竜ティラノサウルス(T.レックス)の歯が刺さったまま残っていたのです。恐竜どうしが「かみついた瞬間」がわかる、とてもめずらしい化石です。
この頭骨は2005年、アメリカ・モンタナ州の「ヘルクリーク層」という約6600万年前の地層から見つかりました。ほぼ完全な形で残ったエドモントサウルス(カモのようなくちばしをもつ草食恐竜、ハドロサウルス類)の顔の骨に、折れたティラノサウルスの歯が1本、ささったままだったのです。現在はモンタナ州立大学ロッキー博物館に展示されています。
恐竜の骨に肉食恐竜のかみあと(歯型)が残る化石は、ときどき見つかります。でも、歯そのものが刺さったまま残るのは非常にまれ。研究者は今回の化石を「白亜紀の“事件現場の捜査”」にたとえています。刺さった歯を調べれば、「かまれた側」だけでなく「かんだ側」もはっきり特定できるからです。
研究チームが歯をCTスキャン(体を切らずに中を調べる装置)で調べたところ、この歯はまちがいなくティラノサウルスのものだと判明しました。歯が刺さっていたのは鼻先のあたり。つまりT.レックスとエドモントサウルスは、正面から向き合ってぶつかった可能性が高いのです。
頭骨には、かまれた傷が治ったあと(骨が再生したあと)が見られませんでした。これは、エドモントサウルスがかまれてすぐに死んでしまったか、すでに死んでいたことを意味します。博物館の学芸員は「歯が骨の中で折れるほどの力ということは、それだけ強烈な攻撃だった」と話しています。ティラノサウルスの一かみの力は、いまも知られている陸の動物の中で最強クラスと考えられています。
化石になった「かみついた瞬間」は、ティラノサウルスがどうやって狩りをして、えものをどう食べていたのかを知る大切な手がかりになります。今回の研究は、カナダ・アルバータ大学とモンタナ州立大学の研究者によって、科学誌『PeerJ』に2026年に発表されました。1つの化石が、大昔の恐竜どうしのドラマをそのまま今に伝えてくれる——そんなロマンあふれる発見です。
エドモントサウルスは白亜紀の終わりごろ、北アメリカにたくさんいた大型の草食恐竜です。全長は約12メートル、カモのようにひらたいくちばしをもち、口の中には植物をすりつぶすための歯がびっしりならんでいました。群れでくらしていたと考えられ、ティラノサウルスにとっては身近な“ごちそう”だったのでしょう。
出典:Sci.News「Duck-Billed Dinosaur Fossil Shows Direct Evidence of Tyrannosaur Attack」
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