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カムイサウルスは、いまから約7,200万年前の白亜紀後期、いまの北海道に生きていた大型の植物食恐竜(ハドロサウルス科)です。北海道むかわ町穂別で見つかった全身の骨格は「むかわ竜」の愛称で広く知られ、国内で発見された恐竜のなかでも群を抜いて保存状態がよい一体として知られています。学名は北海道の先住民であるアイヌの人々が大切にしてきた「カムイ(神)」と、ギリシャ語の「サウルス(トカゲ)」を合わせたもので、「日本産のカムイのトカゲ」を意味します。
物語の始まりは2003年。むかわ町穂別の海でできた地層から、最初は1本の尾の骨が見つかりました。当初は海の生きものの化石と考えられていましたが、専門家の調査で恐竜のものと判明。2013年から2014年にかけて大規模な発掘が行われ、頭から尾まで連なるほぼ全身の骨格が掘り出されました。
復元された全身骨格は全長およそ8メートル。骨の保存率が非常に高く、体つきや成長段階まで細かく研究できる貴重な標本です。正式な学名は2019年、北海道大学の小林快次(こばやし・よしつぐ)博士らによって発表されました。
カムイサウルスは、平たく幅広い口先(くちばし)で植物をかみ取り、口の奥にびっしり並んだ歯で固いものもすりつぶして食べていました。後ろあしで歩くことも、前あしを使って四つんばいになることもできたと考えられています。
カムイサウルスの骨は、海でたまった地層(海成層)から見つかりました。これは、海岸の近くでくらしていた恐竜の死体が川などで海まで運ばれ、そのまま沈んで化石になったことを示しています。当時の北海道は、温暖で海に面した低地が広がる土地でした。
カムイサウルスは、ほぼ全身がそろっているおかげで、日本に生きていた恐竜の姿を具体的に語れる数少ない存在です。アジアと北アメリカのハドロサウルス類のつながりを考えるうえでも重要で、いまも研究が続けられています。実物の化石やレプリカは、むかわ町穂別博物館などで見ることができます。
ホロタイプ(基準標本):北海道大学総合博物館 HMG-1219(ほぼ全身骨格・通称「むかわ竜」)