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デイノニクス(学名 Deinonychus antirrhopus)は、約1億1,500万〜1億800万年前の白亜紀前期、現在の北アメリカにすんでいた中型の肉食恐竜です。学名は「恐ろしいかぎづめ」を意味します。映画に登場する「ヴェロキラプトル」のモデルになった恐竜で、恐竜のイメージを大きく変えた、研究史上とても重要な存在です。
1960年代にデイノニクスが発見されるまで、恐竜は「のろまで愚かな冷血動物」と思われていました。しかし、すばやそうな体つきと大きなかぎ爪をもつデイノニクスの研究から、「恐竜は活発で、温血だったかもしれない」という新しい見方が広まりました。これは「恐竜ルネサンス」と呼ばれる大きな転換のきっかけとなり、現代の恐竜像の出発点になりました。
デイノニクス最大の武器は、後ろあしの第2指にある、大きく曲がったかぎ爪です。長さは12センチを超えました。歩くときはこの爪を持ち上げ、獲物におそいかかるときに突き立てたと考えられています。近年では、ワシやタカのように爪で獲物を押さえこみ、生きたまま食べた、という説も出されています。
デイノニクスはドロマエオサウルス科に属し、近縁種の証拠から全身が羽毛におおわれていたと考えられています。空は飛べませんでしたが、羽毛は保温やディスプレイ、卵を温めるのに役立ちました。鳥にとても近いグループの恐竜で、鳥の進化を考えるうえでも重要です。
大型の植物食恐竜テノントサウルスの化石の近くから、複数のデイノニクスの歯や骨が見つかったことから、「群れで協力して大きな獲物を狩った」という説が長く語られてきました。ただし近年は、現在のワニのように「えさに集まっただけで、協力はしていなかった」という慎重な見方も出ており、議論が続いています。
デイノニクスは全長3メートルほど、体重は70〜100キロ。すらりとした体と長い後ろあし、バランスをとる硬い尾をもち、すばやく動けました。脳も比較的大きく、賢いハンターだったと考えられています。映画の「ラプトル」の俊敏で知的なイメージは、このデイノニクスがもとになっています。
デイノニクスがいた白亜紀前期の北アメリカは、河川や森林のある氾濫原でした。植物食恐竜のテノントサウルスなどと同じ世界を生き、するどいかぎ爪と俊敏さを武器に狩りをしていました。恐竜研究の歴史を変えた、まさに「主役級」の恐竜です。
分類:竜盤目 > 獣脚亜目 > コエルロサウルス類 > ドロマエオサウルス科