
アルゼンチン南部・パタゴニアの荒野から、これまで知られていなかった巨大な植物食恐竜の化石が見つかりました。新種「ビカラコサウルス・ディオニデイ(Bicharracosaurus dionidei)」と名づけられたこの恐竜は、全長およそ20メートルに達する大型の竜脚類(首と尾が長いグループ)です。学術誌『PeerJ』に2026年5月に報告され、「南米のジュラ紀地層から見つかった初のブラキオサウルス類」として世界的に注目を集めています。
ビカラコサウルスが生きていたのは、いまから約1億5500万年前の後期ジュラ紀。発見地はアルゼンチン・チュブ州にひろがる「カニャドン・カルカレオ層」と呼ばれる地層です。研究チームは、30個を超える首の骨(頸椎)に加え、背骨や肋骨、骨盤の一部などを掘り出しました。これだけまとまった骨格が見つかるのは竜脚類では珍しく、当時の南米にどんな巨大恐竜がいたのかを知る貴重な手がかりになります。
体の特徴には不思議な点があります。北米でおなじみのディプロドクスの仲間に似た部分と、アフリカの大型恐竜ギラファティタン(ブラキオサウルスの近縁)に似た部分が入り混じっていたのです。まるで複数のグループの「いいとこ取り」をしたような姿で、竜脚類の進化が一筋縄ではいかなかったことを物語っています。
ブラキオサウルス類は、前あしが長く、首を高くもち上げて高い木の葉を食べていたと考えられる竜脚類のグループです。これまで北米やアフリカ、ヨーロッパのジュラ紀の地層からは見つかっていましたが、南米のジュラ紀からはきちんと確認されていませんでした。今回のビカラコサウルスは、その「空白」を初めて埋める発見になります。
南半球の大陸でも、ジュラ紀にはすでにブラキオサウルス類が暮らしていた——。この事実は、巨大な竜脚類が世界のどこで生まれ、どのように各地へ広がっていったのかを、あらためて考え直すきっかけになります。
ユニークなのは学名の由来です。属名の「ビカラコ(bicharraco)」は、スペイン語の口語で「大きな生きもの・でかいやつ」といった意味。種小名「ディオニデイ」は、自分の牧場で最初の化石を見つけた羊飼いのディオニデ・メサさんにちなんで付けられました。地元の人の発見が世界的な研究につながった、すてきなエピソードです。
今回の発見のポイントを整理すると、次のようになります。
断片的な化石が多い竜脚類の研究において、これだけ情報量の多い標本は「進化のパズル」を解く重要なピースになります。パタゴニアは恐竜化石の宝庫として知られており、今後の追加研究によって、南米の巨大恐竜たちの知られざる歴史がさらに明らかになっていくことが期待されます。
出典:ScienceDaily「This strange giant dinosaur may change what we know about Jurassic titans」/論文:PeerJ, 2026, e20945(最終確認:2026年6月)