
大阪府貝塚市で約30年前に見つかっていたモササウルスの化石が、あらためて詳しく調べ直された結果、これまで日本で確認されていなかったタイプの“海の王者”で、新種の可能性があることがわかりました。岡山理科大学・東京都市大学などの研究チームが2026年7月1日に発表したもので、化石は現在、大阪府岸和田市の「きしわだ自然資料館」に収蔵されています。約7000万年前(白亜紀後期)の地層から出土した、体長およそ6メートルの中型のモササウルスです。
今回の発見は、関西テレビ(カンテレ)のニュースでも大きく取り上げられました。実際の化石や研究の様子は、次の動画でくわしく紹介されています。
この化石はいまから約30年前、1990年代のはじめに大阪府貝塚市の地層から掘り出され、長いあいだ「きしわだ自然資料館」に保管されていました。研究チームがまわりの岩石をていねいに取り除く「クリーニング」を進めたところ、これまで見えていなかった新しい部分が次々とあらわれ、なかには日本ではまだ見つかっていなかった「上あごの先端」の化石も含まれていました。あわせて4か所ほどの新たな部位が確認され、全身の姿がぐっとはっきりしてきたのです。
モササウルスは恐竜そのものではなく、恐竜と同じ時代の海にすんでいた大型のは虫類(トカゲやヘビに近い仲間)です。ヒレのような四肢と長い尾で海を泳ぎまわり、白亜紀の海のてっぺんに君臨した“海の王者”として知られています。
くわしい分析の結果、この大阪のモササウルスはプログナトドン(Prognathodon)属という、モササウルスのなかでも特にがっしりしたグループの特徴をもつことがわかりました。プログナトドンは上あごの歯が前に突き出しているのが特徴で、大きな獲物を骨ごとバリバリとかみ砕いて食べていたと考えられる、いわば“武闘派”のモササウルスです。
プログナトドンの仲間は、これまで北アメリカ・ヨーロッパ・ニュージーランド・モロッコなど世界各地の白亜紀の地層から見つかっていましたが、日本で確認されたのは今回が初めて。海をへだてた遠い地域に共通する種類の大型は虫類がいたことは、白亜紀の海の生態系が世界的につながっていた可能性を示す、貴重な手がかりになります。
じつは近くの和歌山県からも、別のモササウルスが見つかっています。有田川町で発掘され2023年に新種と認められた「メガプテリギウス」は、小魚などを追いかけて食べていたと考えられる、比較的おだやかなタイプ。今回の大阪のプログナトドンが“骨ごとかみ砕く武闘派”だったとすれば、同じ関西の海に、狩りのスタイルがまるでちがうモササウルスが暮らしていたことになります。当時の海の豊かさがうかがえる、面白い対比です。
研究チームが注目したのは、脳に近い部分の骨のつくりです。ほかのモササウルスでは、この付近の骨に血管が通るための細い溝が見られますが、今回の大阪の標本にはその溝がありません。こうした「これまで知られていない特徴」がいくつか見つかったことから、既知のどの種にもぴたりとは当てはまらず、新種である可能性が浮かび上がってきました。
岡山理科大学の林昭次准教授は「今まで知られていない特徴の化石もあり、新種の可能性もある」と話しています。近年は化石をこわさずに調べるCTスキャンや3Dモデルなどの技術が急速に進歩しており、新しく掘り出さなくても、昔の標本を調べ直すことで大発見につながる――そんな“再発見”の時代に入ったことを、今回の成果はよく示しています。
このモササウルス研究には、忘れてはならない一人の存在があります。小学1年生のころから古代生物にのめり込み、モササウルスの狩りの能力を熱心に研究して日本学生科学賞にも輝いた宮内和也さん。しかし2007年、悪性腫瘍のため17歳という若さでこの世を去りました。きしわだ自然資料館のモササウルスのコーナーは、彼の研究があったからこそ生まれたものだといいます。今回の“新種の可能性”という成果は、若くしてこの化石に情熱を注いだ研究者が築いた礎の上に立っています。
新しく地面を掘るだけが古生物学ではありません。博物館の収蔵庫に眠る標本を、最新の目と技術でもう一度見つめ直す――大阪のモササウルスは、そんな“再発見”のロマンを教えてくれます。正式な新種として認められるのか、今後の研究の続報が楽しみです。
出典:関西テレビ「大阪で発掘された“海の王者”「モササウルス」化石 30年越しに“新種”の可能性」/日本経済新聞「30年以上前に発見の化石、新種のモササウルスか 岡山理科大など」/朝日新聞・共同通信ほか(岡山理科大・東京都市大などの研究チーム、2026年7月1日発表。最終確認:2026年7月)
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