
「恐竜の骨に、生きていたころの“いのちの分子”が残っていた」——そんな驚きの研究成果が2026年5月に報告されました。約6600万年前の草食恐竜エドモントサウルスの骨から、体をつくるタンパク質コラーゲンの痕跡が見つかったのです。化石になると元の生体物質はすべて失われる、というこれまでの常識をくつがえす発見として注目されています。
研究チームが調べたのは、エドモントサウルス(カモのようなくちばしをもつ大型の植物食恐竜)の仙骨(せんこつ=腰のあたりの骨)。重さ約22キロもある大きな骨の内部から、コラーゲンと、それに結びつくヒドロキシプロリンというアミノ酸の痕跡が検出されました。コラーゲンは骨や皮ふをつくる代表的なタンパク質で、まさに“体の材料”そのものです。
コラーゲンは、動物の骨・皮ふ・けんなどに広くふくまれる繊維状のタンパク質です。鉄筋コンクリートにたとえると、コラーゲンが“鉄筋”、カルシウムなどのミネラルが“コンクリート”の役割をして、じょうぶな骨をつくっています。ふつうは長い年月のあいだに分解されてしまうと考えられてきましたが、ごく一部が6600万年ものあいだ骨の奥に残っていた可能性が示されたのです。
化石が見つかったのは、アメリカ・サウスダコタ州にひろがるヘルクリーク層。白亜紀の終わりごろ、ティラノサウルスやトリケラトプスも暮らしていた有名な地層です。研究はイギリスのリバプール大学を中心に、アメリカのUCLAなども加わったチームが行い、成果は化学の専門誌『Analytical Chemistry』に発表されました。最新の分析装置で骨をていねいに調べることで、ごく微量の有機分子をとらえることに成功しています。
この発見のすごさは、「化石にはもう生体物質は残らない」という長年の前提に再考をうながした点にあります。研究者は「タンパク質のような有機分子が、一部の化石に確かに存在するようだ」と述べています。もし骨に残る分子をくわしく読み解けるようになれば、骨の形だけでなく分子のレベルから恐竜どうしの関係や進化、体のしくみ、病気まで研究できるかもしれません。
6600万年前のエドモントサウルスの骨から見つかったコラーゲンの痕跡は、「分子から恐竜を調べる」という新しい研究の扉を開く成果です。もちろん、本当に元の恐竜由来の分子なのかは慎重な検証が続きますが、化石にひそむ“いのちの記憶”に迫る一歩として、これからの研究が楽しみです。
出典:ScienceDaily「Paleontology rocked by discovery of organic molecules in 66-million-year-old dinosaur」/論文:Analytical Chemistry(リバプール大学ほか、2026年5月14日)(最終確認:2026年6月)