
メキシコから、頭を“ぶつけ合って”いたかもしれない小さな肉食恐竜が報告されました。新種ゼノヴェナトル・エスピノサイ(Xenovenator espinosai)です。かしこい肉食恐竜として知られるトロオドン類の仲間で、かたいドーム状の頭をもつ初めての例として、2026年1月に学術誌『Diversity』で発表されました。
属名のゼノヴェナトルは、ギリシャ語の「ゼノス(奇妙な)」とラテン語の「ウェナトル(狩人)」を組み合わせたもので、「奇妙なハンター」という意味。種名「エスピノサイ」は、メキシコの古生物学者ルイス・エスピノサ氏に敬意を表してつけられました。
ゼノヴェナトルの頭骨には、ひたいの骨が分厚くなってできたドーム状のふくらみがありました。骨どうしがしっかりかみ合い、表面はゴツゴツしています。研究者は、これは仲間どうしで頭をぶつけ合う行動に使われたのではないかと考えています。鳥に近い恐竜(パラヴェス類)で、このような頭の特徴が見つかったのは初めてのことです。
トロオドン類は、体のわりに大きな脳をもち、するどい目と素早い動きをそなえた小型の肉食恐竜のグループです。「もっともかしこい恐竜」と紹介されることもあります。ゼノヴェナトルはその仲間でありながら、これまでにない“石頭”の特徴をそなえていた、ユニークな一頭です。
化石が見つかったのは、メキシコ・コアウイラ州のセロ・デル・プエブロ層。年代は約7400万〜7200万年前(白亜紀後期カンパニアン)です。頭骨の一部(ホロタイプ標本CPC 2973)は、2000年にマルタ・アギヨン=マルティネス氏によって採集されていたもの。長い時間を経て、その正体が新種として明らかになりました。研究はリベラ=シルバ氏らのチームが行いました。
かしこいハンター、トロオドン類の意外な“石頭”を見せてくれたゼノヴェナトル。頭をぶつけ合っていたのかもしれない、という想像はなんともユニークです。北アメリカ南部の恐竜たちにも、まだまだ知らない一面がありそうです。
出典:Wikipedia「2026 in archosaur paleontology」/論文:Diversity(リベラ=シルバほか、2026年1月9日)(最終確認:2026年6月)